覆面ではなく、ペイントで

顔こそ隠れていないが、異色といえば異色

覆面レスラーとしての特徴はレスラーとしてインパクトを与えること、また自身の素性を隠すことによって謎めいた雰囲気を出すこと、などといった点で重宝されている。もはや日本はもちろん、世界としても覆面レスラーとして活躍するプロフェッショナルはなくてはならない存在であると言えるだろう。中には覆面レスラーでいることに対して誇りに感じているものもいるのを見ると、真にプロレスを愛している姿勢が垣間見れる人もいる。そう考えると覆面レスラーは一見すると悪役を気取っているような印象を持つことになるが、匿名性という事実だけを鑑みれば正義の味方も正体不明が相場となっている。その点についてはロマンを感じるところでもある、そもそも正義の味方の正体が分からないルーツを作り出したという点では、プロレスおかげということになる。

覆面レスラーとしてもそうだが、プロレスの世界では他にも素顔こそ曝してはいるものの個人的な印象として、ヒールレスラーとして活躍している人の中には顔にマジックなどで加工して試合をすることになる『ペイントレスラー』という人達もいる。加工とは述べたがそこまで大胆なペイントを施すわけではない。それこそ黒く塗りつぶして素顔を分からないようにするというものではなく、主に怪奇系レスラー、もしくは悪役レスラーとして通常のレスラーたちとは違う、反則行為上等精神を兼ね備えたキャラクターを強調するためにペイントをする、といったことに用いられる。そう考えてみるとペイントレスラーという存在も少し面白く感じられるので、少しペイントレスラーについて紐解いて行こう。

ペイントをしている自分が代名詞

ペイントレスラーの特徴としては、それをしていることで自身のレスラーとして持っている誇りを強調することに存在意義を見せているところがある。それは覆面レスラーと同様に、顔にペイントをすることによって自分というものの存在を確立することへと繋がっていく面もある。そういう意味ではペイントをしないで試合をすると、どうしても味気ないものになってしまうという印象が出てしまうのかもしれない。それは非常に難しいところになるが、いわば覆面レスラーとは心情は同じところだ。ただ素性を隠すということに執着するのではなく、パフォーマンスの一種としてペイントをすることにより通常の自分とは違う自分になる、ということになるのだろう。

日本にとってそうした顔にペイントするということ自体は特別異色なことではない、というのも伝統芸能でもある歌舞伎において『隈取り』がその代表的な例でもあるからだそう考えると実は凄い日本にとっても親しみのあるものなのかもしれない、そんな風に思うこともできるかもしれない。こう発言できる由縁としては、そもそもペイントレスラーとして活動しているレスラーは主に日本とアメリカに多くみられる傾向があり、一方のヨーロッパやメキシコなどのプロレス界においては顔にペイントを施した選手はほとんど見られないという。アメリカのWWEにおいても確かにいわれて見ればペイントを施しているレスラーを見かけた事があるが、日本との違いとしてはやはりエンターテインメント的な要素を盛り込んだものになっている点だ。アメリカはもちろん、日本でも徐々にペイントレスラーという地位が確立されることとなり、その人気は覆面レスラーと五分にも匹敵するほど知名度を上げていく。

日本最初のペイントレスラーは

こうしたペイントレスラーと呼ばれる元祖、日本で初めてそうしたパフォーマンスを取り入れたのが誰かというのも気になるので紹介すると、その人とは『ザ・グレート・カブキ』が原点と言われている。元々は別のリングネームで活躍していたレスラーだったが、アメリカはテキサスへと遠征に赴いた先にて現地のマネージャーのアイディアで、ペイントレスラーとして活躍することになったのが始まりだと言われている。この名前からも分かるように、日本最初のペイントレスラーはやはり歌舞伎からインスピレーションで生まれたものとなっており、本来は一時の繋ぎとして用いられたが、予想以上に人気を博すこととなり、カブキ以前よりもペイントを施して試合を行っていたレスラーはいたものの、流行を生み出して新たな地位を作り出したという点から考えれば、ザ・グレート・カブキがペイントレスラーの原点であると言えなくもない。

カブキはアメリカで予想以上の人気を獲得することとなり、その後日本に凱旋帰国した際には国民的には及ばないにしても人気は当時不動のものとして見られていたジャイアント馬場などに引けを取らない選手へと成長するのだった。団体としては嬉しい誤算だったかもしれないが、その人気が帰って先輩プロレスラーたちからの嫉妬を買うことになる。

その後カブキを筆頭に日本でもペイントレスラーとして活躍する人口が増えていくこととなり、それは他のレスラー達にも劣るに劣らない人気を獲得することになるのだった。